過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)
ガタンゴトンガタンゴトン……
列車が来る音。人の雑音。改札機を通る音。
列車が停車し、ゾロゾロと人が入って行く。
俺もその人達に紛れて、列車に入った。
座る席を見つけて窓側に座った。
「はぁ」
外は真っ青な空に緑が輝いていた。
ああ、息ができる。
やっと自由を見つけた。
「あの……ここ、大丈夫でしょうか?」
ゆっくりと外を見ていた時、俺と同い年そうな女の子が遠慮がちに声をかけてきた。
「っ……」
まずい、声が出せない‼︎
「大丈夫かどうかなんて、自分で考えて」
俺は今ひどいことを言っている。
「そ、そう、、ですか…」
しばし俺と彼女との間に沈黙が流れた。
本当はこんな雰囲気にしたかったわけじゃない。
「ごめん。俺、全部がどうでもよくて自分では考えられなくなったんだ」
「……」
「だから…その…っ」
「座っていいってことですか?」
彼女はそう言って俺の向かい側の席に腰を下ろした。
「ほんとにごめん…」
会話はそこで途切れ、また沈黙が続く。
俺は外をまた眺めてぼんやりとした気持ちになった。
これからどうしていこう。
俺が言った通り、どっかのばあちゃんの家に移住させてもらえることなんて早々ないし、かと言って一人でやっていけるかも…。
……馬鹿だな俺。何も考えないで家出なんかして。
「ねえ、あなた高校生?」
突然彼女が俺に話しかけてきた。
これは聞かれているから、言えと言われているようなものだ。
だから言葉も口からすらりと出た。
「ああ。青葉高校2年」
「え‼嘘でしょ⁉私も青葉高校よ。3年なの」
「⁉」
同じ高校?ということは彼女もきっと俺が学校で浮いてるってこと知ってるのかな?
「ねえ名前は?」
「神吉(かんき)玲央」
「私は奈良椿」
「つばき…」
「うん、素敵な名前でしょ」
こんなにも心が軽やかになったことはすみれが死んでしまってから一度もなかった。
でも今はどこか楽しんでいる自分がいた。