2021-01-01から1年間の記事一覧

あの結晶の春を君とまたもう一度

第五節 明々の灯火 事故が起き、もうすぐ3週間が過ぎようとしていた。僕がタイムループした日に近づいてきていたのだ。これで、……もうこんな想いをすることはないのかな。いつか、有名な外国人哲学者が言っていた言葉だ。 『現実は一度きり。時間も一度きり…

あの結晶の春を君とまたもう一度

第4節 紅色の君 「キャーーーー‼‼」 ガっシャーーーーンッッ!という爆音が聞こえた直後、女の人が叫ぶ声がする。 「誰か、誰か、助けて‼どうか彼を……!…ああ、そうだ、救急車。救急車を呼んでちょうだい!早く!」 地面にぐったりと横たわる青年。その青年…

あの結晶の春を君とまたもう一度

第三節 晴れ模様の君 20××年2月12日 雪希ちゃんが事故に合って死ぬ二日前ーーー。本当にこんな事ってあるのだろうか。でも、ってことは僕はタイムループをしたってことになるのだろうか。正直、今はまだ実感が湧かない。とにかく、雪希ちゃんが今もまだ生きてい…

あの結晶の春を、君とまたもう一度

第一節 残雪 どうして、こんなことになってしまったんだ…っ。どうして僕は今、ここに居るんだ。 「はぁっ、はぁっ…雪希…っちゃん!」 動悸がどんどん激しくなっていく。息が上手く吸えなくなっている。いくらもがいたって、酸素が身体に届くことはないし、現…

私の世界はいつも、雨模様

空を見上げると、青空は広がっていなかった。 地面を見ると、激しい雨が打ちつけていた。 耳を澄ましてみれば、何も聞こえなかった。 辺りを見回してみたが、誰もいなかった。 ひとりぼっちだ……。 光のささない世界で一人ぼっちだ。 でも、私はここに光がさ…

君が聞かせてくれた希望の物語

1.私の目から希望が消える ピッ。私は駅の改札口を通り、よく晴れた真っ青な空を見ることもなく、ただ機械的に動いていた。 私にとって、足はただ学校へ行くための物であり、口はご飯を食べる物。手はシャープペンを動かす物であり、目は問題集を見るだけ…

君が聞かせてくれた希望の物語

~あらすじ~ この夏、二人だけの奇跡が起こる――。 「私、自分と戦うよ――」 医者から後、4か月の命しか残っていないと宣告された遥。彼女の目には≪希望≫が映っていなかった。だから悲しくても涙さえも流れ出すことはない。そんな遥を守ってやりたいという16…