100万年後のあの場所で君とまた出会いたい

第一章 1000001回目の出会い 今日も一人と部屋で目を覚まし、一人の、食卓でご飯を食べ、誰もいない部屋に、さよならを告げる。 苦しくはない。悲しくもない。ただすべてが “どうでもよかった“ 何のために、誰のために、私は現在(いま)ここにいるのか。何…

100万年後のあの場所で君とまた出会いたい

序章 命の灯 私はいつ、終わるのだろう。 『自分はもう、これから永遠に、何かに心を揺るがされたり、大切なものが生まれたりすることはないのだろうと。思っていた。』 (引用:100万回生きたきみの七月隆文さんの言葉) 朝の空、昼の空、夜の空を見る度に綺…

あの結晶の春を君とまたもう一度

第五節 明々の灯火 事故が起き、もうすぐ3週間が過ぎようとしていた。僕がタイムループした日に近づいてきていたのだ。これで、……もうこんな想いをすることはないのかな。いつか、有名な外国人哲学者が言っていた言葉だ。 『現実は一度きり。時間も一度きり…

あの結晶の春を君とまたもう一度

第4節 紅色の君 「キャーーーー‼‼」 ガっシャーーーーンッッ!という爆音が聞こえた直後、女の人が叫ぶ声がする。 「誰か、誰か、助けて‼どうか彼を……!…ああ、そうだ、救急車。救急車を呼んでちょうだい!早く!」 地面にぐったりと横たわる青年。その青年…

あの結晶の春を君とまたもう一度

第三節 晴れ模様の君 20××年2月12日 雪希ちゃんが事故に合って死ぬ二日前ーーー。本当にこんな事ってあるのだろうか。でも、ってことは僕はタイムループをしたってことになるのだろうか。正直、今はまだ実感が湧かない。とにかく、雪希ちゃんが今もまだ生きてい…

あの結晶の春を、君とまたもう一度

第一節 残雪 どうして、こんなことになってしまったんだ…っ。どうして僕は今、ここに居るんだ。 「はぁっ、はぁっ…雪希…っちゃん!」 動悸がどんどん激しくなっていく。息が上手く吸えなくなっている。いくらもがいたって、酸素が身体に届くことはないし、現…

私の世界はいつも、雨模様

空を見上げると、青空は広がっていなかった。 地面を見ると、激しい雨が打ちつけていた。 耳を澄ましてみれば、何も聞こえなかった。 辺りを見回してみたが、誰もいなかった。 ひとりぼっちだ……。 光のささない世界で一人ぼっちだ。 でも、私はここに光がさ…

君が聞かせてくれた希望の物語

1.私の目から希望が消える ピッ。私は駅の改札口を通り、よく晴れた真っ青な空を見ることもなく、ただ機械的に動いていた。 私にとって、足はただ学校へ行くための物であり、口はご飯を食べる物。手はシャープペンを動かす物であり、目は問題集を見るだけ…

君が聞かせてくれた希望の物語

~あらすじ~ この夏、二人だけの奇跡が起こる――。 「私、自分と戦うよ――」 医者から後、4か月の命しか残っていないと宣告された遥。彼女の目には≪希望≫が映っていなかった。だから悲しくても涙さえも流れ出すことはない。そんな遥を守ってやりたいという16…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第三話つづき)

れお……、レオっ!………玲央っ‼‼ 目を覚ましてっ! お願い、……だから。 目を覚ましてよ~。 白い壁にかすかに薬の匂いがする。 開いている窓からは涼しい風が吹き、カーテンがそよそよと宙を舞う。 とても穏やかで幸せな瞬間だった。 でもその幸せな時を過ごせ…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第三話つづき)

おばさんと椿さんがその≪用事≫とやらを終えて、家に帰ってきたときにはもう日が傾いていた。 「玲央、おじいちゃんただいまー」 椿さんが俺とおじさんに声をかける。 「あの……こんな俺なんかが聞いていい話じゃないと思いますけど、今日の用事って何だったん…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第三話)

「おばあちゃん、おじいちゃん、おはよ~~‼‼」 おばさんの家に椿さんの大きな声が響き渡る。 まるで目覚まし時計のように甲高いうるさい声だ。 ガチャ‼ 突然に開け放たれたドアの音と同時に朝に似合わない大きな声が飛び込んできた。 「あ!玲央。おはよう…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)長編

俺は取り合えず、住む家が見つかったことにホッと安心していた。 「ほらほら、玲央君。ジュースだよ。何がいい?」 「カルピスを」 「はいはい。カルピスね」 そうおばさんは言って俺にカルピスを注いで、目の前においてくれた。 そして俺はそのカルピスが入…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)

俺は彼女が座っていた所に置いてあった紙切れを取って、そっと開いた。 里中町37-5の家に訪ねてみて! もしかしたらあなた、住む場所も考えてないんじゃないかと思って。 奈良 椿 その紙切れには急いで走り書きした文字が並んでいた。 俺はとっさに列車…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)

「あ、ねえ!」 「なに?」 椿という彼女がまた話題を振ってきた。 「あなたは今日学校なのに、なぜこんな列車に乗っているの?」 「………」 俺が一瞬黙ったせいか、彼女は「あ、気にしないで!別に知りたいな~って思ってただけだから!」なんてことを言って…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)

ガタンゴトンガタンゴトン…… 列車が来る音。人の雑音。改札機を通る音。 列車が停車し、ゾロゾロと人が入って行く。 俺もその人達に紛れて、列車に入った。 座る席を見つけて窓側に座った。 「はぁ」 外は真っ青な空に緑が輝いていた。 ああ、息ができる。 …

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第2話)

第二話 「玲央。ご飯を食べなさい」 母さんが俺に優しい声をかけてくる。 その顔には深い悲しみの色があった。 「うん……」 俺は言われるまで行動が出来ないから、母さんも絶対にうんざりしている。 それとも心配をかけていたりするのか? 父さんは俺が行動し…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第1話つづき)

彼女はまだ幼い三歳の娘を見つめながら、この静かな家族の時間も娘が生きていてくれることも、その時までは全てが幸せに思えた。 そう。 その時までは…… ❀❀❀ ❀❀❀ ❀❀❀ 彼女が今の俺を見たらどんな顔をするのだろうか。 どんな風に思うのだろうか。 きっと失望…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第1話)

第一話 もしも、もう変えられないものがあるとして、そうしたらあなたは過去に戻ってやり直したいと思いますか。 もしも、もう取り戻せないものがあるとして、そうしたらあなたはその背中を、その手を掴むことができますか。 もしも、もうどうにもならないこ…