2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第三話つづき)

おばさんと椿さんがその≪用事≫とやらを終えて、家に帰ってきたときにはもう日が傾いていた。 「玲央、おじいちゃんただいまー」 椿さんが俺とおじさんに声をかける。 「あの……こんな俺なんかが聞いていい話じゃないと思いますけど、今日の用事って何だったん…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第三話)

「おばあちゃん、おじいちゃん、おはよ~~‼‼」 おばさんの家に椿さんの大きな声が響き渡る。 まるで目覚まし時計のように甲高いうるさい声だ。 ガチャ‼ 突然に開け放たれたドアの音と同時に朝に似合わない大きな声が飛び込んできた。 「あ!玲央。おはよう…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)長編

俺は取り合えず、住む家が見つかったことにホッと安心していた。 「ほらほら、玲央君。ジュースだよ。何がいい?」 「カルピスを」 「はいはい。カルピスね」 そうおばさんは言って俺にカルピスを注いで、目の前においてくれた。 そして俺はそのカルピスが入…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)

俺は彼女が座っていた所に置いてあった紙切れを取って、そっと開いた。 里中町37-5の家に訪ねてみて! もしかしたらあなた、住む場所も考えてないんじゃないかと思って。 奈良 椿 その紙切れには急いで走り書きした文字が並んでいた。 俺はとっさに列車…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)

「あ、ねえ!」 「なに?」 椿という彼女がまた話題を振ってきた。 「あなたは今日学校なのに、なぜこんな列車に乗っているの?」 「………」 俺が一瞬黙ったせいか、彼女は「あ、気にしないで!別に知りたいな~って思ってただけだから!」なんてことを言って…

過去はいつでも透明色の色彩のよう(第二話つづき)

ガタンゴトンガタンゴトン…… 列車が来る音。人の雑音。改札機を通る音。 列車が停車し、ゾロゾロと人が入って行く。 俺もその人達に紛れて、列車に入った。 座る席を見つけて窓側に座った。 「はぁ」 外は真っ青な空に緑が輝いていた。 ああ、息ができる。 …