過去はいつでも透明色の色彩のよう(第三話つづき)
れお……、レオっ!………玲央っ‼‼
目を覚ましてっ!
お願い、……だから。
目を覚ましてよ~。
白い壁にかすかに薬の匂いがする。
開いている窓からは涼しい風が吹き、カーテンがそよそよと宙を舞う。
とても穏やかで幸せな瞬間だった。
でもその幸せな時を過ごせたのはほんのわずかだった。
彼女が泣き叫ぶ声、そして俺の体にしがみついて離れない。
彼女の華奢で弱々しい体でここまで強く抱きしめられたことはなかった。
ああ......。
俺はきっと死ぬ。
どうして死ぬのかは分からないけれど、彼女を置いて先に死んでしまう。
こんなことあってはならないのに……。
俺には彼女を守り切るという使命がある。ずっとそばにいるという使命がある。
その使命を捨てて俺は一人あっちの世界へいくというのか?
残酷すぎる。
悲しすぎる。弱すぎる。ひどすぎる。最低すぎる……………。
「………お。起き……て」
「玲央。起きて!大丈夫?」
ん、んんっ!?
俺が目を開けると、そこには椿さんが心配した表情で俺を見つめている。
そして俺のおでこに手を近づけてきてペタッと触った。
「熱い!玲央、あなた熱があるわ」
確かに体は正直、めちゃくちゃしんどい。
しかも、何か夢にうなされていたような気がした。
内容はあまり覚えてはいない。
「待っててね!おばあちゃん、呼んでくるから」
そう慌てた様子で椿さんはドタバタと階段を下りて行った。
俺、どうかしちゃったのか?
胸が苦しくて息があまりできない。
だんだんと過呼吸になっていって肺が痛い。
ドンドンドンドンドンッ!
階段をまた慌てて上がってくる音がした。
「玲央君!大丈夫?病院に行ってお医者さんに診てもらいましょう!」
おばさんは、俺のおでこを椿さんと同じように触って「高熱だわ」と呟きながら、ささっと促すように俺を立たせ、「玲央君が着替えたらすぐに病院に行きましょう」と言って、またドタバタと階段を下りて行った。
ああ、早速迷惑かけちゃったな。
俺は罪悪感を抱えつつ、そのだるい体を動かして私服に着替えた。