君が聞かせてくれた希望の物語
~あらすじ~
この夏、二人だけの奇跡が起こる――。
「私、自分と戦うよ――」
医者から後、4か月の命しか残っていないと宣告された遥。彼女の目には≪希望≫が映っていなかった。だから悲しくても涙さえも流れ出すことはない。そんな遥を守ってやりたいという16歳の少年――優希。彼女の虚ろだった瞳にはいつしか希望の光が灯りだした。二人の純粋で、愛に溢れた純粋恋物語。
第一章
プロローグ
彼女の余命は後――か月。
「誠に申し上げにくいのですが、あなたの命は後、4か月しか残っていません」
「残りの時間をあなたにとって有意義なものにしてくださいね」
そういって医者は、微笑んだ。
――彼女の気も知らず…。
その瞬間、彼女の目から光が消えた。
でもそれはほんの数秒のことで、彼女は全てを悟るようによく通る声で「……はい」と答えた。
彼女は涙の流し方を知らない。
彼女は怒り方を知らない。
彼女は希望を知らない。
彼女は人への甘え方を知らない。
彼女は人からの愛を知らない。
――守ってやらなきゃ。
俺が守ってやらなきゃ、俺が教えてやらなきゃ――。
涙の流し方
怒り方
希望
甘え方
愛
全部、全部教えてやらなきゃ――。
そうじゃないと彼女の心がもたない、潰れてしまう。
――死んでしまう。
俺は雨の中、歩きながら泣いていた。
何度も何度も、手の甲で拭った。でも涙は、とめどなく溢れてくる。
でもその瞬間、ふっと吐息が漏れた。
彼女は涙の流し方を知らない。
だけど俺は涙の止め方を知らない。
「お前の後、何か月と何日と何時間と何分と何秒。すべてをこれからは幸せな時間にする」
そして俺は、彼女の肩を抱き寄せた。