過去はいつでも透明色の色彩のよう(第1話つづき)
彼女はまだ幼い三歳の娘を見つめながら、この静かな家族の時間も娘が生きていてくれることも、その時までは全てが幸せに思えた。
そう。
その時までは……
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彼女が今の俺を見たらどんな顔をするのだろうか。
どんな風に思うのだろうか。
きっと失望する。絶望する。
君がいなくなってしまった世界に生きる意味なんてなかった。
全てがどうでもよくなって、ある日俺の心の糸がプツン……
自分の意見が言えなくなった。
自分で考えることができなくなった。
それはたぶん全てがどうでもいいからだと思う。
もしもまた彼女に会えたとするのなら、変わりたいと思っただろう。
だが彼女もいないこの世界の俺は自分の殻に閉じこもって、出てこないあさりのようなどうでもいい存在。
俺がこうなってしまって親も家族も先生も学校も俺によそよそしい態度をとった。
「玲央。自分の意見をしっかり言いなさい‼なぜ箸を持たない?なぜ何を聞いても父さんが決めてと言う?」
「玲央はあの子がいなくなってしまってから変わった。あの子のことがそんなに大切だったのか?」
大切だったよ。お互いを好きになり、相思相愛の関係を築けたんだから。
でも彼女は体が弱かった。
一年生存率、30%。
余命4か月。
こう宣言されたとき彼女がどれだけの恐怖と不安で飲み込まれていたのかは俺には分からなかった。
だから間違いを犯した。
いつもこの真実から顔を背け、せめて彼女が生きていた時、彼女にとって幸せなことをしてやれていただろうか。
ちゃんと彼女を心の恐怖や不安から救ってやることはできたのだろうか。
「ああ。すみれは大切だった。俺の恋人だったんだ」
そういうと父さんは俺をじっと見つめた。
たぶん全てがどうでもいい俺が、すみれのことに関しては思っていることを口にだしたからなのだろう。
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ねえ。気づいてる?
たぶん気づいてないよね。
私はあなたのそばにいつもいるよ。
だから元気を出して。
本当は姿を現してあなたのことを力いっぱい抱きしめたい。
元気を出してねって…安心してねって…
でもそんなことは叶わない。